【洞爺湖温泉、壮瞥】来年七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の舞台となる洞爺湖周辺でサミット「特需」がじわりと広がっている。二○○○年の有珠山噴火以降、観光客数が伸び悩んでいた観光施設などの利用が増加に転じ、サミット主会場のホテルは物見遊山の客が殺到したため八月から規制を始めた。関係者はサミット効果を徐々に感じている。(伊達支局 増田智明、室蘭報道部 楢木野寛)
「予約のお客さまだけとなっております」
七月末、首脳会合の会場となるザ・ウィンザーホテル洞爺(胆振管内洞爺湖町)を見ようと家族で寄った室蘭市内の四十代女性は、ホテルの数キロ手前の路上で警備員に止められて驚いた。「予約客だけなんて知らなかった」
四月下旬のサミット開催決定後、同ホテルは大型連休からほぼ満室が続いている。これ自体は例年のことだが、七-八月のカフェやレストランの売り上げは前年の約30%増だ。トイレ休憩で寄る観光バスも急増し、観光名所さながらにホテル内を歩く団体客まで現れた。
このため、宿泊客やレストランなどに予約を入れている客を除き、入館を断っている。「高級ホテルの空間を守るためやむを得ない」と同ホテルは理解を求める。その代わりホテル側は、今月一日から敷地内にある展望台に向かうロープウエーを初めて夏季運行している。ホテル内には入れないものの、天気の良い週末は三百人以上が訪れる。
洞爺湖温泉観光協会によると、観光客数を押し上げているのは台湾、中国などアジアの外国人客に加え、道外客。「ツアーのPRでも『来年サミットが開かれる洞爺湖』と紹介される効果は大きい」
五月以降、有珠山ロープウェイ(同壮瞥町)と遊覧船「洞爺湖汽船」(洞爺湖町)はいずれも前年比で20-30%増と好調で、温泉街のタクシー運転手も「『品川』『練馬』など本州ナンバーが目に付く」と話す。
洞爺湖温泉の六月の延べ宿泊者数は前年より10・5%多い約七万四千人(洞爺湖町まとめ)となり、七月も5%以上の増加は確実。
しかし、サミット開催期間(七月七-九日)を含む六-十日に一般客の宿泊を制限する政府方針が八月初めに明らかになっただけに、観光業者の間には「規制中は商売になるか不安。今が稼ぎどき」(温泉街の飲食店店主)との声も上がる。
サミット「特需」に期待も高まるが、仮に宿泊客数が前年比10%増で推移しても年間約七十七万人。八十万-九十万人台を記録した有珠山噴火前の一九九○年代後半の水準には及ばない。観光業者は「知床ブームが落ち着いて客が戻って来たとも言える。サミットも増加の一因とは思うが…」と慎重な見方を崩さない。
(北海道新聞 引用)
ザ・ウィンザーホテル洞爺
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