第百六十八臨時国会が十日召集され、安倍晋三首相は同日午後、衆参両院本会議で内閣改造後初の所信表明演説を行う。首相は、参院選の与党惨敗について「国民の思いや怒りに十分応えきれていなかった」と反省を表明。「改革の影の部分にきちんと光を当てる」として、敗因となった都市と地方の格差解消に取り組む姿勢を強調する。今国会最大の焦点であるテロ対策特別措置法の延長問題では、インド洋での海上自衛隊の給油活動に関し「国際社会における責任を放棄していいのか」と訴え、活動継続に反対する民主党などに歩み寄りを求める。
首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」の必要性にあらためて言及するが、政権の最重要課題に位置づけてきた憲法改正については「国民の期待に応える議論が行われることを希望する」と述べるにとどめ、保守色はかなり薄めている。
参院選の焦点となった年金記録不備問題について、首相は「原因と責任を明らかにし、必ず解決する」と強調。地方対策では、地方自治体への権限移譲や地域間の税収の偏りの是正に取り組み、道州制実現に向けた検討を加速する考えを重ねて表明。農産物輸出に積極的な「攻めの農政」の担い手だけでなく、高齢者や小規模な農家への支援を打ち出す。地方の医師不足解消のため、地方大学の医学部へのへき地勤務枠設置などを提唱する。
参院で野党が過半数を占める国会対応に関しては、与党による強行採決など強引さが目立った先の通常国会とは対照的に「野党とも建設的な議論を深め一つ一つ丁寧に答えを出していく」と民主党など野党へ協力を呼びかける。
今国会の焦点の一つである「政治とカネ」の問題に関連し、内閣改造直後に遠藤武彦前農水相が補助金不正受給で辞任したことに触れ「二度と起きないよう万全を期す」と強調。政治資金について「一層透明性を高めることが不可欠」と指摘するが、領収書添付の義務付けを「一円以上」とする政治資金規正法の再改正は「国会で十分論議してほしい」と要請するにとどめる。
(北海道新聞 引用)
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